2023-02-10 | PUBLICATIONS
STEM教育は学際的な研究分野として、幅広い分野の実践者や研究者が、横断的に議論することが期待されます。毎号テーマを設定しておりますが、第5巻では、そのテーマの範囲を超えて、様々な先進的な実践事例や、独創的な研究、海外の事例等の研究論文や実践研究を数多く投稿いただきました。
今回は、査読者および編集委員の協議の結果、1本の論文を採択し掲載しています。
また特別寄稿として、上野学園高等学校による、高校生が取り組まれた研究を掲載しました。
STEM教育学会では、今後も「STEM教育研究」の刊行と内容の充実を図ってまいりたいと考えております。
今後もより多くの研究者が投稿されることと、より多くの読者に活用していただくことを期待いたします。
本誌に関するご意見、ご感想等は、お問い合わせフォームより受け付けています。
編集長 | 赤堀侃司(一般社団法人 ICT CONNECT21) |
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副編集長 | 中川一史(放送大学) |
編集委員 | 大谷忠(東京学芸大学) |
編集委員 | 岡部恭幸(神戸大学大学院) |
編集委員 | 加藤由樹(相模女子大学) |
編集委員 | 齊藤萌木(東京大学高大接続研究センター) |
編集委員 | 下郡啓夫(函館工業高等専門学校) |
編集委員 | 中橋雄(日本大学) |
編集委員 | 堀田博史(園田学園女子大学) |
編集委員 | 益川弘如(聖心女子大学) |
編集委員 | 山口真希(前・金沢学院大学) |
発行者: 日本STEM教育学会
発行地: 東京都新宿区
■論文
大学での専攻分野検討時期と専攻分野選択の関連とその性差
池田 岳大
本研究は,大学での専攻分野検討時期と実際に選択した専攻分野との関連およびその性差を分析することで,大学における専攻分野の性別分離がいかにして形成されるか検討する。特に,社会構造としてのジェンダー秩序の存在によって,男女それぞれが性少数派の専攻分野に進学する際には専攻分野検討時期の遅れがみられるか否か,四年制大学に通う大学生の個票データを用いた計量分析によって実証する。
分析の結果,性少数派の専攻分野への進路選択,具体的には男性比率の高い専攻分野へ進学する女性(もしくはその逆のパターン)においては,性多数の専攻分野への進路選択をする男女よりも専攻分野検討時期の遅れがみられた。この結果は,性多数派の進路では周囲への同調による進路選択の早期化,性少数派の進路においては葛藤による進路選択の遅延化といったジェンダー秩序による影響であると考えられ,専攻分野の性別分離を帰結することが示唆される。
■特別寄稿
特別寄稿の背景
上野学園高等学校「平和を目指す」は、2021年3月の「ベネッセSTEAMフェスタ(主催:ベネッセコーポレーション)」において、「思春期におけるいじめをなくすには。」と題した研究発表を行い、JSTEM学会賞を受賞した。本稿は、その研究発表の内容をもとに寄稿されたものである。ベネッセSTEAMフェスタ(旧名称:新しい学びフェスタ)は、2011年から続く中高生向けの教育イベントである。毎年50校程度の学校から中高生が集まり、学校内外で学んだプロセスや成果をポスター発表やデモンストレーションとして披露し、社会課題に取り組む実践者や各分野の研究者との対話を通じて、その学びを深化させている。
本稿の研究発表は、発表タイトルの通り「思春期におけるいじめ」をテーマにしたものだ。研究では、いじめはいつでもどこでも起こりうるが『いじめをしない人・環境がある』という仮説を立て、誰もが本音を語ることができる安心・安全な環境づくりを目指し、取り組んだ。取り組みにおいては、前述の仮説を検証するため、北米を中心に行われている生徒のみの集会「アセンブリ」に着目。実際に学校で複数回、実施条件を変えたアセンブリを実施し、仮説検証を行ったことが高く評価された。
今後、STEMの観点から様々な社会課題と学問を結び付けた探究的な学びが全国各地の高等学校で活発化していくことを期待し、特別寄稿として収録した。多くの方にお読みいただければ幸いである。
小村 俊平
(ベネッセ教育総合研究所 教育イノベーションセンター長/ベネッセホールディングス 経営企画推進本部 副本部長/本会 幹事)
アセンブリ活用の有効性と課題 ‐いじめや差別が起こりにくい環境構築に焦点を当てて‐
寺澤 雅・中村 日胡・吉沢 百馨(上野学園高等学校)
本研究の目的は,いじめや差別が起こりにくい環境を意図的に創出できるかを検討することであった。いじめや差別が起こる主原因としては,閉鎖的な学校環境が,安全かつ安心に対話をする場所ではない可能性があること,学校内の各場面における対話に,平等性が欠如しているのではないかという2つの問題意識の下,5回のアセンブリ(生徒のみで実施する対話集会)を実施した。具体的には、高校生を対象に,私的集団(同クラス遊び仲間集団),公的集団(学年)を区別した。それぞれの集団において,共通認識を持つ話題が提供される環境,否定的発言が含まれる状況で話し合いを実施し,話しやすさの程度の評定とその際に感じたことを自由に記述してもらった。その結果,両集団とも,対話テーマを持った生徒のみの集会環境において,道徳的判断に基づく話しやすい環境の自然構築,攻撃性の抑制,相手の意見を受け入れる傾向が見られた。最後に,本研究における課題を考察した。
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