2025-09-05 | EVENTS / ACTIVITIES
2025年9月13日(土)開催の「日本STEM教育学会 第8回年次大会【オンライン開催】」の一般発表の内容を掲載いたします。
開催概要・プログラム内容および参加お申し込みは、こちらよりご確認ください。
■一般発表 分科会A
座長:佐藤幸江(放送大学、日本STEM教育学会理事)
A-1)「AI時代の教員養成における教科横断型STEM教育実践」
矢田敦之(高知大学)
大学生63名を対象として,防災教育を統合したPBL型の授業を「初等数学科指導法」において設計・実践した。ICTを活用し地域の防災リスクを数学的に分析するSTEM教育を展開した結果,「数学の有用性認識」「防災への当事者意識」「教科横断的教材開発意識」が有意に向上した。学生が数学の実用性を再認識し,防災を自分のこととして捉えるなど,本実践はAI時代の教員養成において統合的な思考力を涵養するうえで有効であった。
A-2)「一人でできる透明骨格標本作製キット」
西川洋史(埼玉県立進修館高等学校)
児童生徒が骨について学習する際の教材は骨格模型や小型動物の骨格標本に限られていたが,近年では透明骨格標本も紹介されている。透明骨格標本は骨を染色後,薬品を使用して筋肉を透明にするため微細な骨格の立体構造が保たれている。しかし,その作製には専門的知識と多くの手間が必要となり,通常の授業に導入することは困難である。そこで本研究では,プロトコールに沿って作業を進めるだけで透明化が可能なキットを検討した。
A-3)「中学校数学科における批判的思考力を育成するための錯視を用いたSTEAM教材の開発」
堤美羽(大阪教育大学大学院)、葛城元(大阪教育大学教育学部)、田端優介(大阪教育大学附属池田中学校)、井場恒介(大阪教育大学附属池田中学校)
本稿では,中学校数学科における批判的思考力の育成を目指して,錯視図形を題材とするSTEAM教育をデザインした。生徒がオリジナルの錯視デザインを用いて三角形の合同条件による証明を行い,さらに自ら錯視図形を作成して検証する学習活動を組み込んだ。その結果,本実践の特徴として,第1に,学習者が「見かけ」と「数学的事実」のズレを検討・評価し,合同条件を用いた証明を通して批判的思考のプロセスを体験できること,第2に,観察・測定・作図といった具体的な操作を通じて錯視を数学的に吟味し,自らの発想を論理的に検証することで,批判的に思考する態度を実践的に養えるよう構成されていることが明らかになった。
A-4)「幼児期における「STEAMモデリング・チャレンジ」プログラムについての実践研究」
竹歳賢一(大阪大谷大学)
STEAM教育において有効な幼児・児童・中学生を対象とした「STEAMモデリング・チャレンジ」プログラムを開発し、その効果を検証してプログラムを提案することを目的とする。本稿では、幼児期におけるプログラムを設定して、どのような教育効果が期待できるかを「非認知能力」養成の観点から教育実践をおこなった。その結果、「STEAMあそび」が「通常のあそび」と比較して「非認知能力」を高める可能性があることが示唆された。
■一般発表 分科会B
座長:濵田英毅(玉川大学)
B-1)「エチレンジアミン四酢酸バナジウム(V–EDTA)の大学入学共通テスト科目「化学」への出題:その配位構造を巡って」
野口大介(長崎大学)
大学入学共通テスト「化学」で出題されたエチレンジアミン四酢酸オキシドバナジウム(VO−EDTA)に関連し,それらの配位構造を先行研究の結晶構造データに基づいて検討した。EDTA錯体は一般に6配位とされるが,V−EDTAでは配位数(6-7)や配位座数(四-六座)に多様性が見られた。こうした結晶構造データの活用は,将来的にSTEM教育や探究学習の開発に有益であり,物質の視覚的な理解を深める一助とする可能性も検討される必要があるだろう。
B-2)「AIを活用した英語学習効率化の実践:「AIアウトプットゼミⓇ」を通じた学習支援の試み」
竹岡篤志(北海道大学工学院)、塩野入希実(北海道大学)、大坪嵩海(北海道大学))
日本の大学生向け「AIアウトプットゼミⓇ」は、ChatGPTを活用した英語学習の効果を検証した実践研究である。参加者はAIによる個別フィードバックや対話練習の機会を高く評価し、学習意欲の向上も確認された。しかし、学習習慣の継続やAIへの依存といった課題も明らかになった。本研究は、AI時代の英語教育における新たなモデルを提案し、効率的かつ自律的な学習を促す可能性を示している。
B-3)「生成AIの強みを活かす対話型歴史学習アプリの開発と授業デザイン―― 概念形成・批判的思考を促す歴史人物シミュレーターによる個別最適化授業の可能性 ――」
濵田英毅(玉川大学)、佐藤雄太(株式会社みんがく)、鈴木博幸(福島県立光南高等学校)
生成AIは歴史学・歴史学習との親和性が高いと指摘されてきたが、英語教育などに比べその研究・実践の蓄積は十分とは言い難い。本稿では、筆者らが生成AIの利点と限界を踏まえて設計した「歴史人物シミュレーター」を取り上げ、概念形成と批判的思考の促進、ならびに学習者に応じた個別最適な学びの実現可能性を検討する。あわせて、授業デザインの重心を教授(Teaching)から伴走・支援(Coaching/Facilitation)へ移すスタイル転換を提起する。
B-4)「視覚表現を通じた生物理解の深化と学習構造の再編成」
江連知生(品川区立大原小学校)
本研究は、小学校理科におけるSTEAM教育の実践として、特に「Arts(アート)」の要素に焦点を当て、児童の問題解決力と多角的思考の育成を目指したものである。児童は、生物の「からだのつくりとはたらき」をテーマに、予想・観察・結果を絵で表現する活動に取り組んだ。その結果、活動前の正答率62.4%に対し、活動後は84.7%に向上し、視覚的表現が理解の深化と認知的発達に寄与することが示された。また、絵による表現は、言語化が困難な思考の可視化を可能にし、他者との共有や説明を促進する効果も確認された。これらの成果は、初等教育におけるSTEAM教育の中で「A(Arts)」の意義が極めて重要であることを示唆している。
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