EVENTS / ACTIVITIESイベント・活動

日本STEM教育学会 第3回年次大会【オンライン開催】一般発表予稿

2020-09-16 | EVENTS / ACTIVITIES

2020年9月26日(土)開催の「日本STEM教育学会 第3回年次大会」の一般発表の予稿を掲載いたします。

開催概要・プログラム内容はこちらよりご確認ください。

 

■一般発表 会場A

A-1)「STEM教育とスポーツの融合(STEM & SPORTS)~スポーツを通して育むことができる「子どもの考える力」~」
大石懐子(codience),加藤直樹(東京学芸大学ICTセンター教育情報化研究チーム),吉沼智(codience)

本稿では,STEM教育の周知とSTEM & SPORTS教材開発の足がかりとすることを目的に,株式会社西武ライオンズと共に実施したスポーツを通したSTEM教育の試みについて報告する。野球の経験がある子どもとない子どもに,「3塁まで早く到達するにはどうしたら良いか」をSTEM教育の統合的な学習を意識して実践させた。従来とは別の方法を生み出すという発想力,発表の場を設けることでプレゼン力なども養う機会となった。

A-2)「高等学校における科学的探究力の育成を目指したSTEAM教育の実践~1学期間の活動を通して~」
池 恩燮(大分県立大分舞鶴高等学校),小林優子(筑波大学大学院・日本学術振興会特別研究員DC)

昨今、Society5.0の社会を生き抜く人材の育成として高等学校でのSTEAM教育の必要性が述べられているが、高等学校で実施されているSTEAM教育の実践事例は少ない。そこで、発表者が勤務する高等学校では、本年度からSTEAM教育への挑戦とその実践事例の普及を図っている。1学期間は、特に理科(物理)×数学×情報分野の構造化された課題研究を行い、その中で生徒は、仮説の設定を通して変数を意識し、実験のデータを振り返る中で実験を再設計し、数理モデルを作成する中で物理や数学で学んだ知識を関連付けていた。

A-3)「STEAM教育における音楽科教育の展望―中学校音楽科の視点からー」
内田有一(上野学園大学短期大学部)

STEAM教育におけるArtについて、芸術と教養という2つの概念が併存している。新学習指導要領では、「音楽における感性を働かせ、音や音楽を、音楽を形づくっている要素とその働きの視点で捉え、自己のイメージや感情、生活や社会、伝統や文化などと関連付けること」を音楽的な見方・考え方としている。音楽科では、自己のイメージや感情と関連させた価値創出と音楽を通した文化理解をねらいとしており、芸術と教養を網羅する。

A-4)「日本におけるSTEM分野の人材に関する政府統計に基づいた調査分析」
田中若葉(東京学芸大学大学院),大谷忠(東京学芸大学大学院)

本研究は,日本におけるSTEM教育の在り方を検討する上で,その背景となるSTEM分野の労働力の現状について調査・分析するため,学校教育を通して育成されるSTEM分野における人材との関係について検討した.その結果,日本における技術者を構成する集団は,そのほとんどが理科系の大学学部卒業者,大学院修了者であった.また,日本の技術者育成においては,依然として,工学分野における人材育成が重要であるとともに,情報処理・通信分野や医療分野では工学分野以外の人材も重要になってきていることがわかった。

A-5)「美術教育専攻の学生がつくる幼児向けインタラクティブ遊び環境のデザイン」
井上昌樹(東京福祉大学短期大学部),茂木一司(群馬大学)

図工・美術の現場では映像表現やメディアテクノロジーの扱いについて依然慎重で、ICT導入がなかなか進まない現状がある。領域を超えた全体的人間形成に向け、「アート×プログラミング」はアナログとデジタルを、芸術的感性と科学的思考を融合させた創造的学びの実現可能性を秘めていると言える。ここでは、筆者らが群馬大学の学生を対象に行った、幼児向けインタラクティブ・アート制作のプロジェクト型授業について実践報告をする。

 
■一般発表 会場B

B-1)「産官学連携の実践型STEM人材育成プログラム」
村重慎一郎(アクセンチュア(株)),打尾賢一(アクセンチュア(株)),朴咲輝(アクセンチュア(株)),常森大貴(アクセンチュア(株))

産官学連携の実践型プログラム(複数大学でのデータ分析実践講座、介護デジタルハッカソン、STEM人材育成を目的した大学生NPO法人)の企画・運営を実施してきた。企業の視点からデジタル社会に求められる人材像を定義し、大学・専門学校・高校、自治体、地元企業(介護事業者、IT企業等)と一体となり推進してきた。現実の社会課題をテーマにしたプロジェクト型演習、産官学連携の実践に向けたポイントについて紹介したい。ト

B-2)「アーテックロボ2.0を用いた風力に関するデータ計測を取り入れた理科実験観察教材の開発」
安藤明伸(宮城教育大学技術教育講座),西川洋平(宮城教育大学附属中学校)
三宅丈夫((株)アーテック),大橋一平((株)アーテック)

本研究では,定量的な観測が困難とされる風力の計測について,アーテックロボ2.0というマイコンボードを用いた計測とそのデータをコンピュータ上の表計算ソフトでリアルタイムに確認することのできる理科実験観察教材を開発した。開発した教材を使用し,中学校第2学年にて授業を行った。授業は,データの計測と効率よく発電するプロペラの製作の2時間で構成した。主観評価では約93%の生徒が他教科との関連を意識することができたと回答しており,自由記述からは技術,数学等との関わり,作ることで学べたことについて言及されていた。

B-3)「課題解決型ロボットプログラミング講座の展開スキームと今後の展望」
福井洋志(アクセンチュア(株)),村重慎一郎(アクセンチュ(株)),川田千寛(アクセンチュア(株)),野高みり(アクセンチュア(株))

AIと人間の協働が前提となる次世代に向けて、次世代を担うSTEM人材に対する期待の高まりは一層増している。弊社では、2015年から課題解決型ロボットプログラミング講座を実施し、STEM人材育成に努めてきた。
論文では、本講座において小学生という教育の初期段階で習得しておきたいスキルや本講座の成果を紹介するとともに、実施にあたり見えてきた課題、及び今後の展望を紹介する。

B-4)「JAXA宇宙教育センターにおけるプログラミング教材開発」
桜庭望(八洲学園大学),古賀友輔(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構JAXA)

JAXA宇宙教育センターは,学校教育支援,社会教育活動支援,体験的な学習機会の提供を行っており,教材開発はSTEMに限らず幅広い分野にわたっている。はやぶさ2のタッチダウンをシミュレーションするプログラミング教材等の事例は,論理的に考えていく力の育成とともに様々な発展性が期待される。教科横断的な取り組みは学校や教師の意識改革ばかりでなく,社会全体で進めていく必要があり,外部人材の活用や多様なプログラムの導入を進めていかなければならない。「答えのない問題」について考える場を提供する宇宙を題材とした教材は,自律的,主体的,継続的な学習態度の醸成を図る一助となる。

B-5)「EV×未来社会創造ワークショップ「バリアフリーと移動を考える」の実践報告」
池田めぐみ(東京大学大学院 情報学環),大島まり(東京大学 生産技術研究所),鈴木高宏(東北大学未来科学技術共同研究センター、東京大学大学院 情報学環),荒木恵理子((一社)電気自動車普及協会、(株)ベネッセホールディングス、(株)ベネッセコーポレーション),黒岩隆之((株)JTBコミュニケーションデザイン),山内祐平(東京大学大学院 情報学環)

STEMの中でも,Technology(技術)とEngineering(工学)に関連した学外学習の重要性が指摘される。本報告では,インフォーマルワークショップ,「EV×未来社会創造ワークショップ『バリアフリーと移動を考える』」の実践内容について報告する。

 
■一般発表 会場C

C-1)「国語科学習者用デジタル教科書を初めて活用した教師および児童の授業場面における考察」
森下耕治(光村図書出版(株)),笈木敬志(光村図書出版(株))岡田恵美(戸田東小学校),髙橋健太(戸田東小学校),中川一史(放送大学)

2018年度の2学期から3学期にかけて,小学校3・4年生を対象に,学習者用デジタル教科書を活用した授業と調査を実施した。活用を続けていると,児童が教材文に線を引いたり,文を抜き出して整理したりする活動の時間が増えてきた。デジタル教科書の活用方法の一つとして,考えを教科書上に表現する活動に焦点を当てた授業に関して考察した。

C-2)「AIロボットを活用した心の教育」
江口千穂(東京都北区立王子第二小学校),茂木勝彦(東京都北区立王子第二小学校)

新型コロナウイルス禍における児童の心のケアは急務である。家族型ロボットとして開発されたAI ロボットの活用により,児童の不安感を解消するとともに,自分の気持ちを相手に上手く伝えられない児童やコミュニケーションに課題のある児童の心のケアと学校生活への適応を図った。また,AI の日常化を通し,Society5.0の時代を生き抜く児童の育成を目指した。ト

C-3)「オンラインを活用したプログラミング講座の実践と教科学習意欲との考察」
平野恵(放送大学大学院修士課程(大妻中野中学校・高等学校)),辰己丈夫(放送大学)

新型コロナウイルス感染症対策として、全国の小中学校、高校、特別支援学校は3月2日より3か月もの長期にわたり臨時休校となり、この間多くの学校ではオンラインを活用した学習活動の継続を模索した。本稿では、通常時は対面授業形式で行っていた中学生希望者向けのプログラミング講座を、オンラインで実施した実践報告と、休校期間から分散登校に至る1学期の講座参加者と非参加者との教科学習意欲の相違について考察する。

C-4)「PBL教育に関する実践研究の分析に基づいた問題解決学習の特徴」
栁原みず季(東京学芸大学大学院),大谷忠(東京学芸大学大学院)

本研究ではSTEM教育において横断的・総合的な側面から学習に取り組む上で,問題解決学習の方法として注目されているPBL教育が有効であるとの仮説に立った。問題解決学習の特徴について詳細に調べるため,PBL教育に関する実践研究の分析を行った。その結果,最近の国内におけるPBL教育に関する論文は,その殆どが大学を対象にした実践研究が中心であり,大学における実践研究の約6割がProject-Based Learningの内容であること,Problem-Based Learningの内容は,その1/3程度であることがわかった。また,STEM教育におけるTechnology(T)やEngineering(E)の内容を含む理科系の工学分野では,問題解決のためのプロジェクトとして課せられる学習方法が主流であるのに対して,同様に理科系の保健分野では,問題に基づく問題基盤型の学習方法が多く活用されていることがわかった。

C-5)「コロナウイルス禍のなかで見えてきた新しい学びの可能性~ デジタル活用による授業のSTEAM化」
芦野恒輔((株)ベネッセコーポレーション),小村俊平((株)ベネッセコーポレーション)

令和2年2月28日の文部科学省の通知により、3月より多くの学校が休業した。一方で、休業中は家庭学習の時間を活かし、自らの興味関心を元に学びを深める生徒の姿が見られた。また、生徒を支援する教員からは、休業中のオンラインでの家庭学習支援の経験を活かし、オンラインを活用した授業や評価を検討する動きも見られている。このような動きは「授業のSTEAM化」に向けた示唆を含む。その実践を報告する。

 
■一般発表 会場D(SIG4:STEAM教育研究会)

D-1)「Art/Arts提案書におけるアートの観点~Art/Arts提案書報告総論~」
下郡啓夫(函館工業高等専門学校),古岡秀樹((株)学研ホールディングス),有賀 三夏(東北芸術工科大学),杉原麻美(淑徳大学),島青志(慶應義塾大学大学院),荻原彰(三重大学),谷美奈(帝塚山大学)

イノベーションは,OECDイノベーション戦略において成長戦略の核に据えられたが,その後SDGsにおいても,イノベーションが課題解決の中心的役割を担うなど大きな期待が寄せられている。その流れは,Society 5.0という概念生成にも反映されており,その社会実現の教育手段としてのSTEAMもイノベーションの創出を前提に考えなければならない。
「未来の教室」とEdTech研究会STEAM検討ワーキンググループ中間報告(2020)をドラッカーのイノベーションの観点から読み解くと,多感覚間の相互作用に基づく,観察による事象の新たな捉え方の育成について確立していく必要性があることにたどり着いた。

D-2)「アート思考の今後求められる方向性~Art/Arts提案書報告①~」
有賀三夏(東北芸術工科大学),三森朋宏((株)日立アカデミー/(社)日本SEL推進協会/シックスセカンズジャパン),西村文孝(学研塾ホールディングス),加茂文吉((学)片柳学園日本工学院八王子専門学校ミュージックアーティスト科/音響芸術科 ),森本彩(三重県立四日市高等学校),野田苑恵((株)GIビレッジ クランテテ三田)

複雑さと不確実性が増していくVUCA の社会では,従来の論理的思考や批判的思考では限界があると言われている。この課題を乗り越えるものとして期待されているのがアート思考である。
そのアート思考をまず概観し,博士の多重知能理論と創造性理論を基礎にして、人が芸術を作り出すときに創出・創発する思考プロセスからヒントを得たアプローチである芸術思考と比較した。そのことで,イノベーション創出には,アート思考とイノベーションのアウトサイド・イン・プロセスが必要であることを見出した。

D-3)「観察を軸とした人間教育について~Art/Arts提案書報告②~」
杉原麻美 (淑徳大学), 森博樹(一般社団法人子供教育創造機構), 後藤学(白鴎大学), 竹之内奏(日本知育音楽芸術協会)

現代社会に対応した人材育成への期待から、Art/Artsを採り入れた学習機会は対象年齢や組織を問わず同時多発的に拡大している。STEAM教育研究会の第2分科会では、とくにSTEAM教育の「人間教育」の面に着目し、教育実践例と関連研究を踏まえ、Art/Artsからの洞察・観察によって学習者側にどのような理解促進、意識変容、動機形成がもたらされているかを整理する予定である。本発表では、その中間報告と今後の活動について述べる。

D-4)「アートを活用した新たな創造性プロセスについて~Art/Arts提案書報告③~」
島 青志 (慶應義塾大学大学院付属研究所研究員),小澤知典(慶應義塾大学大学院付属研究所研究員),中村美由紀(慶應義塾大学大学院付属研究所研究員)

本研究は、社会の複雑性や不透明さが増す今後の社会の中で、一人ひとりが身につける必要がある創造性のプロセスについて、理論に基づいた方法論を探求するものである。創造性に関する様々な研究では、社会システムの中で相互コミュニケーションが行われる「場」が形成されることが必要であることが示されている。そして本研究ではそのための方法論について、マインドセットとしてのアート(アート思考)及び手法としてのアジャイル(スクラム)の方法論に着目し、これらの方法論と創造性プロセスについて考察を行った。

■一般発表 会場E(SIG2:プログラミング教育/6-18のプログラミング教育研究会)

E-1)「学校全体で取り組むSTEM教育の試み」
佐藤幸江(元金沢星稜大学),藤田由紀子(高知市立浦戸小学校)

本研究は,公立の小学校において,学校全体でSTEM教育を実施するための方向性を探ることを目的としている.本校の研究発表会資料,市教育委員会への報告書,オンライン校内研究会の記録から,地域にある学校のあり方,管理職の役割,校内研修の充実が,全校で取り組む際の1つの方向性のあり方として明らかにすることができた.

その他)

  • 小学校プログラミング教育の具体
    藤田由紀子(高知市浦戸小学校)/高畑将樹(高知市教育委員会)
  • 中学校プログラミング教育の具体
    郡司直孝(北海道教育大学附属函館中学校)/福本徹(国立教育政策研究所)
  • 教材作成側から見たプログラミング教育の必修化
    鈴木広則(スズキ教育ソフト)/大笹いづみ(教育ネット)