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日本STEM教育学会 第2回年次大会 一般研究発表予稿

2019-09-27 | EVENTS / ACTIVITIES

2019年9月28日(土)開催の「日本STEM教育学会 第2回年次大会」の一般研究発表の予稿を掲載いたします。

 
■高校生ポスターセッション(予稿はありません)
・岡山県立瀬戸高等学校
・東京都立立川高等学校
・豊島岡女子学園 中学校・高等学校
・広尾学園中学校・高等学校
・福井県立若狭高等学校

 
一般研究発表A

A-1)「SD-STEAMモデルに関する一考察」
井越昌紀(持続可能エネルギー環境教育研究会)、大谷忠(東京学芸大学)

STEAMは人間性を入れた点で,科学技術中心のSTEMよりスコープが広がり,多様性を受容でき,これからの子どもたちの学習や生涯学習のスキルの方向を表している。一方,国際的には,環境問題,資源の枯渇など多くの問題が顕在化し,持続可能な開発(Sustainable Development:SD)の方向が模索されている。これからは倫理と結びついた持続可能性という点に目を向ける必要がある。ここでは歴史的にS.T.E.A.M.の源流を見ながら,倫理的な視点を入れたSTEAMであるSD-STEAMモデルについて考察する。

A-2)「エンジニアリング活動を取り入れた中学校技術科におけるSTEM教材の実践」
渡津光司(東京学芸大こども未来研究所),大谷忠(東京学芸大学),木村優里,原口るみ(東京学芸大こども未来研究所),金子嘉宏(東京学芸大学)

東京学芸大こども未来研究所では,産学連携によるSTEM教育の普及を目的として,中学校技術科におけるSTEM教材を開発した。本教材は,STEM教育における技術(T)とエンジニアリング(E)の横断・連携を目的として,2017年改訂中学校学習指導要領解説技術・家庭編に示されている中学校技術科の学習過程に沿って,デザインプロセスの考え方を導入したEの活動を取り入れている。本発表では,STEM教育におけるTとEの学習を取り入れた中学校技術科におけるSTEM教材について実践した結果について報告する。

A-3)「どこからどこまでがSTEM教育か?」
胸組虎胤(鳴門教育大学)

STEM教育はその構成科目を統合的に用いる教育方法であるが,「どこからどこまでがSTEM教育であるか?」についての見方は定まっていない。本研究では,STEM教育が(1)統合水準により分類可能で,(2)統合方法には内容統合,文脈統合などがあり,(3)統合範囲にはSTEM内外という点で狭義と広義があることを示し,STEM教育の範囲を提案した。さらに,STEMの構成科目を系統的に学ぶこととの関連を論じた。

A-4)「社会教育におけるエンジニアリングを基軸としたSTEM教育の実践と体系的な推進」
木村優里(東京学芸大こども未来研究所),大谷忠(東京学芸大学),原口るみ(東京学芸大こども未来研究所),金子嘉宏(東京学芸大学)

STEM教育において,S・T・E・Mの各領域をどのように統合的に捉えるかについては,多様な枠組みが示されている。近年注目されているイノベーション人材育成という点に鑑みると,その中でも特に,エンジニアリングを基軸としたSTEM教育が期待されている。そこで,民間教育機関や遊び場において,エンジニアリングを基軸としたSTEM教育を実践し,体系的に推進することを試みた。各実践の概要,位置づけ,開発した教材について報告する。

 
一般研究発表B

B-1)「小学校プログラミング教育を継続して取り組む教員が認識している授業設計の視点」
小林祐紀(茨城大学),中川一史(放送大学)

本研究の目的は,小学校プログラミング教育を継続して取り組む教員が有している授業設計の視点を明らかにすることである。小学校プログラミング教育に1年以上継続して取り組んでいる3名の教員を対象に,半構造化面接法によるインタビューを実施した。質的研究法を参考にして得られたデータを分析した。結果,小学校プログラミング教育の授業設計の視点として,10のカテゴリーが導出された。研究対象者は,これまでも重要視されてきた授業設計の視点を適用しつつ,プログラミング的思考の正しい理解や日常生活とのつながりについて,教師自身が理解すると共に,児童が認識できるように留意するといった小学校プログラミング教育に特有の授業設計の視点を有していることが明らかになった。

B-2)「英語の構造と英単語の理解を深める中学生向けScratchプログラミングの提案」
平野恵(放送大学),辰己丈夫(放送大学)

プログラミング言語の多くは英語圏で開発されており,その言語のルールは英語のルールに基づいている。日本語を母国語とするプログラミング学習者は,その点を強く意識しなければならないが,近年では各国の言語に対応したブロック型のプログラミング学習ツールが利用できるようになり,Scratchはその代表例である。Scratchを利用して,中学生が未習得の英語の構造や英単語を理解する一助となるような,プログラミング授業を提案する。

 
一般研究発表C

C-1)「EV×未来社会創造ワークショップの実践報告」
池田めぐみ,大島まり,鈴木高宏(東京大学),荒木恵理子(電気自動車普及協会),山内祐平(東京大学)

STEMの中でも,Technology(技術)とEngineering(工学)に関連した学習は,フォーマルな学習環境における学習機会が限定される。そのため,インフォーマルな学習環境において,これらについて学ぶことのできる環境を提供していくことも重要となる。本稿では,インフォーマルな学習環境において実施した「EV×未来社会創造ワークショップ」の内容について報告する。

C-2)「micro:bitを用いた親子実験教室」
長谷川大和(東京工業大学附属科学技術高等学校),代田雪絵(学研プラス)

2020年度から小学校においてプログラミング教育が本格的に実施される前に,児童と保護者で学ぶSTEM親子実験教室というものを実施した。親子実験教室というスタイルにしたのは,児童だけでなく,保護者にも学びを体験してもらうことで現代の総合学習に対する理解をより深めてもらいたいと考えたからである。micro:bitというプログラミング教育用マイコンボードを用意し,児童と保護者で一緒にプログラミングしながら,様々な課題に取り組んでもらった。

C-3)「学校放送番組を活用した「ものづくり」に関する研究」
岩崎有朋(岩美町立岩美中学校),小林祐紀(茨城大学),中川一史(放送大学)

中学校理科におけるものづくりは様々に実践研究されているが,その多くに見られる課題として思考スキルや問題解決の手立てといった探究技能の提供である。教師の支援や生徒相互の関わりの中での自然解決といった不確定なものによらない生徒自らの探究技能の向上が求められている。そこで,探究技能のヒントを学校放送番組に求め,自分たちの課題に即した番組を選択視聴し,そこで得られた探究の技能を使って問題解決を行う。それによって教師の指導力の差によらない問題解決の促進が図られることをねらった実践研究の構想である。

C-4)「理科実験における学校BYODの実践報告 Google Science Journalの活用」
西澤利治(電脳商会),藤廣直人(CAMI & Co.)

生徒所有のスマホを学校に持ち込む「学校BYOD」は,通信端末としての利用が論じられている。しかし,スマホに内蔵された音・照度・動き・磁気など各種センサーの計測値が利用できれば,教科に連動したBYOD実現が期待できよう。そこで本研究では,実験ノート作成アプリの「Google Science Journal」を利用して,理科実験でBYODを実践する際の問題点と効果,観察データのクラウド共有などの在り方を報告する。

 
一般研究発表D

D-1)「デジタル時代の新・剰余定理について」
高木和久(高知工業高等専門学校)

「数理,データサイエンス,AI」の基礎は,デジタル社会の「読み,書き,そろばん」であると言われている。本研究では剰余定理を拡張し,割り算を高速に行うことができるようになった。そして大学入試に頻出する問題を,行列と割り算を用いて解く新しい方法を発見した。

D-2)「AIスピーカーを活用した学級事務(成績処理)の自動化に関する研究」
小川裕也(柏市立柏第三小学校),中川一史(放送大学)

近年,長時間労働の是正等働き方改革の取り組みが学校現場でもなされている。現場の教員の長時間労働の一つに,授業準備や成績処理をはじめ,多様な事務処理がある。本研究では,学校で行われている事務(成績)処理に改善の余地があることに注目した。AIスピーカーを活用した評価の自動記録・整理する方法は,従来と比較してかなりの時間短縮に繋がる。本研究で仕事の時間が短縮され,より良い働き方が可能になる事を示したい。

D-3)「デジタル・情報活用評価規準の開発に向けて」
小田理代 (ベネッセコーポレーション), 赤堀侃司 (ICT CONNECT 21), 森本康彦 (東京学芸大学), 稲垣忠 (東北学院大学), 兼宗進, 島袋舞子, ⻑瀧寛之 (大阪電気通信大学), 鷲崎弘宜, 齋藤大輔 (早稲田大学), ⻄端律子 (畿央大学), 福田大年 (札幌市立大学), 渡辺美智子 (慶應義塾大学), 竹内光悦 (実践女子大学), 玉田和恵 (江戸川大学), 牧野直道, 菅崎直子 (ベネッセコーポレーション)

情報技術が社会の基盤となる中で,新しい技術をうまく使うだけでなく,創り出すことで,社会課題を解決しながら,経済発展を支える人材の育成が今後さらに求められる。このような社会の変化は進みこそすれ後退することはない。初等中等教育段階において,今後の社会に必要なデジタル情報活用能力とはどのようなものかを示すためのデジタル情報活用評価規準の作成に,今後産官学一体で取り組むことを提案する。

D-4)「デジタル・情報活用能力を測定するアセスメント開発 -小学校5,6年を対象としたCBT-(The assessment development for measuring ICT proficiency)」
松尾春来, 牧野直道, 岡本和之, 佐伯元章, 小島英嗣, 菅崎直子 (ベネッセコーポレーション),赤堀侃司(教育テスト研究センター)

急速に進む高度情報化社会の中で,新学習指導要領において,情報活用能力が学習の基盤となる資質・能力として位置づけられた。本研究では,デジタル・情報活用能力を測定するためのCBTのアセスメントを主に小学5,6年生向けに開発した。実際にICT・プログラミングをすることも問題として組み込んだ。研究協力校で調査した結果,アセスメントの信頼性が確認された。